奈良・大和路の情感あふれる風景を生涯にわたって追い続けた写真家、入江泰吉。彼が遺した作品は、春夏秋冬の色彩に彩られた大和路の風景や祈りの仏像や万葉の花々など、およそ八万点にもおよびます。その風景写真の数々には、現在世界遺産として認定されているいにしえの文化遺産や遺跡、万葉歌人の心を歌に織りこんだ伝承の地など、遥かなる大和路の歴史を受け継いだ心癒される景観が数多くとらえられています。
麗しくもたおやかな情感とともに、太古にさかのぼる神話や伝説にも通ずるような静謐な気配が伝わってくる作品群は、「奈良」の醸し出す情緒そのものを見事にとらえています。その作品と一対一で相対したとき、あたかもその場に居合わせたかのような感動と澄みきった心の平穏を感じさせてくれることでしょう。
この展覧会では、入江泰吉自身がその膨大な作品群から絞り込んだ、代表作品100点を一堂に展覧します。入江泰吉氏は、自らの集大成として取り組んだ同展の選定とレイアウトを終えた翌年に他界しており、いわばその遺作ともいえる珠玉の作品群が今回展示されます。
風のそよぎや小川のせせらぎにも心眼をそそぎ、あからさまな描写を抑制した“平穏で静謐”なその作品の数々。ミュゼふくおかカメラ館で、写真家・入江泰吉のまなざしに写った奈良・大和路の情緒と風情をご覧いただき、ひとときの静かな古都の旅へとお出かけください。 |